続編 第四話  <No.7>



さて,話をもとに戻すことにして,363トンを最大離陸重量とした,このロサンゼルス へのフライトの場合,離陸時に必要な燃料は125トンであった.したがって,許容される 零燃料重量は 363−125で238トン.つまり,最大零燃料重量であるとした. これから,まず最初に運航自重を引かなければならない.運航自重とは飛行機自体の 重さに装備や補給品や乗員の重量などを足したもので,ここでは,175トンと すると,238−175で63トンの重さが乗客や手荷物,貨物の重さに割り当てられる.

会社によって多少の違いはあるかもしれないが,概ね大人一人の重さは 77キロ,手荷物などは20とか30キロぐらい(乗客のクラスによって持ちこめる 重さが違う)で計算されるので,大雑把にいって 400人の乗客がいるとすると,それだけで40トンのウエイトが必要となり,あと 貨物がいくらあっても重量の上ではそれに当てられる重量は23トンとなる.

貨物専用機や貨客混載機でもないかぎり,貨物は客室の下の胴体部分に搭載するので それほど積めるものではない.だから,この例のように23トンも重量が割り当てられれば それほど重量の問題はおこらない.

しかし,朝からの小雨が出発時には大雪になって短時間に滑走路状況がわるくなった ことにしてみよう. 都会が雪によわいように,飛行機にも雪は大敵だ.とくに滑走路上につもった雪がさらさら とした雪ではなくて,成田や関空ではおおむねスラッシュとよばれる水分を多量に含んだ 雪になるので,ここの例でもそうだと仮定する.もちろん,滑走路上の雪のみが問題なの ではなくて,翼の上にかぶった雪も離陸時にはおおきな障害となり,事故の原因になり 得ることはご承知だろう.通常,滑走路にスラッシュがあり,それがある一定の限度を こすと離陸が禁止されてしまう.しかし,その限度以下であれば,離陸重量をおとして離陸 することは可能だ.スラッシュが存在する条件で最大離陸重量を計算すると,なんと 最大離陸重量が333トンに制限されたと仮定してみよう.すると,333−175で 零燃料重量は158トンに制限され,そこから燃料の125トンを引くと,乗客と貨物への 割り当てられる重量は33トンになってしまい,当初の63トンを30トンも下回って しまう.33トンでは400人の乗客を全部乗せるわけにはいかないし,貨物は当然 ながら全然載せることができない.ここから,あらゆる空港のセクションの人々を 巻き込んだせめぎあいがはじまるのである.

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