第二話 <No.8>


加速度形は基本的に2個を安定盤 の上に,一個を真北に向け他の一個をそれと直角になるように取り付ける.これで,一個 が北をむいていれば,他の一個は必ず東西に向くことになる.それにより,INS つまり 航空機が少しでも移動すれば,この安定盤上の2個の加速度計により南北方向,東西方向 に移動した距離がコンピュ−タにより計算される.勿論,航空機が常に南北,東西方向に 動くとはかぎらない.北北東に移動すれば,必然的に南北成分と東西成分の合力により 得られる距離が北北東に飛行した距離となる.INSはかようにその安定盤上の特定の 加速度計を常に正確に真北に向くようにしなければならない.それに役立つのが,同じ 安定盤上にとりつけられたジャイロスコ−プである.安定盤のよこゆれ,たてゆれ, かたゆれを防ぐのに最低3個のジャイロスコ−プを必要とし,コマの原理により, 安定盤は航空機の動き,姿勢と無関係に常に一定方向に保持される.

このジャイロのINSにおける役割は非常に重要で,安定盤を一定方向に保持するだけ ではなくて,地球表面に対しても常に安定盤を水平にたもつ役割もはたしている. もし,安定盤が水平ではなくて傾くとバネに結合されている重錘が地球の重力により傾いて いる方向にすべり加速度計の出力はINSの移動による慣性の加速度成分だけでは なくて地球の重力による成分も混在することになり,出力は不正確となる.

しかし,ここで別の問題がでてくる.ジャイロの働きで安定盤が慣性空間に一定方向に 固定され,並びに地球表面に対して水平に固定されると,地球の自転により水平に 保たれるのがむずかしくなる.これを説明するのに,例を赤道より北極に向かって 飛行する航空機にとってみよう.赤道より北極にむかって飛行すると地表面が円形故 に絶えず頭をさげて飛行していく状況になり,赤道上では地表面に水平であった安定盤 が,北極上空では水平ではなくて90度傾いた状態となる.この問題を解決してくれる のが ジャイロがもつもう一つの特性 歳差運動(プリセッション)である.この 特性とは回転しているジャイロのローター軸が自由に動くようになっていると,その ローターにある力が作用したときにローターは加えられた力の方向にたいして90度の 角をなす方向へ動いていくというものである.

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