第二話 <No.4>


目的地空港の予報により代替空港の選択がおわれば,いよいよルートの選定である. 該当する高度の高層天気図の上にミニマムフライトパス(MFP)を引く事から始まる. 出発地より目的地の方面に一時間でとべるであろう点を結んだものが最初の一時間の アワーリータイムフロントとなる.無風状態であれば,単に同心円の弧にすぎないが, 風がふいていれば,向かい風成分のある方向では,その円の半径は短くなり,追風成分 のある方向ではその円の半径は長くなるから,無風状態の場合と違い,アワーリータイム フロントはかなり変形されたものになる.そのようにして,2時間目,3時間目,4時間目 とアワーリータイムフロントを引き続けていく.目的地にちかくなったら,次は目的地空港 から逆行して一時間ごとにさかのぼりながらアワーリータイムフロントへの最短コースを むすんでいくと,その日の風の状況にもとずいたミニマムフライトパス(MFP)が出来あがる.

しかし,事の成否は如何に正確に高層天気図の解析を行ったかの一点にかかっている.それが 不正確であれば,何本MFPを引いてもまったく意味をなさないし,骨折り損である.現在の 高層天気図はWINTEM チャートと言い,それぞれの高度の地図上の各グリッド上(緯度経度 の交点,一般的には5度単位)に予報の風の矢羽と数字による温度がしめされた天気図だが 昔の高層天気図はそれと違い,主として太い実線,細い実線,破線などにより気圧の等高線, 等温線や風速の等しいところを結んだ線などが縦横にひかれたものであって,解析には かなりの知識とエネルギーを要した作業であった.今現在ではコンピュータがどのようにして MFP を計算しているのか興味のあるところだが,コンピュータが使われ始めた初期の段階では, ある意味で原始的な方法をとったものであった.つまり,計算速度の速さにものをいはせて 出発,到着空港の二点間にありとあらゆるルートを引きまくり,すべての飛行時間を瞬時に 計算して,その中から,たとえば BEST 10 ROUTE を選び,運航管理者の目の前にプリント アウトし,後は運航管理者の判断に任せるといったものであった.

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