気象現象と安全運航 〜その1〜
 少し具体的な例を上げてみる。飛行機がプロペラの推進力と広い主翼によって、比較的低空を飛んでいた頃には余り遭遇しなかった現象がある。積乱雲などの対流の強い雲の中に入れば、上昇流と下降流の混在するところで飛行機が激しい揺れに遭遇することは知られていた。だがこれはこのような雲に突入することをしなければ避けられる揺れである。この現象は「乱気流」と呼ばれていた。飛行機の性能が良くなり、高い高度にまで昇って飛ぶことができるようになると、対流性の雲がない晴れた空域でも激しい揺れ、乱気流に出会うことが出て来た。これが「晴天乱気流」と呼ばれるようになった現象である。
 この現象の発生する場所の気象状況はなかなか判らなかったが、熱心な研究者の努力により、その発生原因となる気象状況の解明がされ、発生確率の高い空域の予測が可能になって来た。このため、それまで大きかった遭遇確率が減ってきた。詳しく事情を知らない人には、性能が良くなった飛行機のせいで揺れなくなったように思えてくる。

 そうなると現金なもので、運航支援業務に携わり、安全で快適な飛行の実現に努力している人々のことなど考えなくなる。ひいてはそのような者の存在意義すら忘れられ、その部門を整理する方向に傾いて行く。実際それに類したことが、企業の中の現場に疎い幹部の中で考えられ、実行されさえする。運航現場には専門家とは言えない者の数が増える。その結果、飛行環境に対する助言が不足して、再び晴天乱気流に巻き込ま れる事態が発生する可能性も出る。
(C)2001 KATOW-Kimio

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