台風来襲時の運航例  〜その3〜
  駐機方法はできれば強い横風を避けるため、風に機首を正対させることが望ましい。このためには少なくとも台風中心の進行経路が、飛行場のどちら側を通るか(TY-7図)ということは正確に予報できて欲しい。大型の飛行機、例えばB747ジャンボジェット機などは50ないし60ノットの風速には横向きでもどうにか耐えられると聞いた。風向に正対して、さらに機体に重りとして例えば燃料を積めば、それ以上の風速にもある程度耐えることができるそうである。
  ただこれは機体全体として耐えられる風速である。扉の開閉がどのくらいの風速まで可能であるのかは、また別の問題である。当然もっと早くから扉の開閉にともなう作業は中断される。台風でなくても強風時に、客室や貨物室の扉の開閉が制限されて、運航に支障が起こることもある。
  飛行機自体の安全な保護・保管の他に、多数存在している運航支援の器材の安全確保も考えなければならない。これらは飛行機の耐えられる風速よりも数値の低い、言い換えれば弱い風でも影響が大きい。ということは早めに手当をしなければならないことになる。そうなると飛行機への作業にも支障が出てくることになる。
  話として聞いたことではあるが、航空会社でもまだプロペラ機ばかりを使っていた頃である。その飛行場をほぼ直撃する台風に見舞われた。機内には水を入れた袋をたくさん積み込んで重しにした上、パイロットや整備士がエンジンをかけてプロペラを回す。外では事務職員も交えた何人もの作業者のグループが手分けして、台風の通過に合わせて機首を風に正対させる。駐機中の飛行機に対して次々に繰り返し、同じ手順を一晩中続けた、ということである。自分達の飛行機を守ろうとする気迫が感じられる話である。しかしこれはもう遥か昔の話になってしまった。
(C)2001 KATOW-Kimio

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