台風の風と飛行機
  航空機にもいろいろの種類があるので、風による影響にもそれだけ多くの場合が出て来る。筆者は永年の間航空会社の運航業務の現場で、気象面からの運航支援を担当してきた。しかし対象が旅客機に使われる大型の飛行機であったので、台風の風が航空機に与える影響を話す場合にも、大型飛行機に特定された話題に片寄ってしまう。しかし航空機と付き合う人の大多数は、(独断かも知れないが)旅客機の利用者だろうから、台風の近づいて来たときには、自分の乗る予定の飛行便が飛ぶかどうかが大きな関心事となる。そこでまず飛行場に向かって台風が接近して来ることを想定して、航空会社ではどの様に航空機およびその運航の安全を守っているか、ということについての話をする。
  しかしその前に一般的な話をしておこう。

  多くの飛行機が空中においては(乱気流にさえ出会わなければ)100 ノットを超える風の中でも平気で飛行している。別の章で述べることだが、風というものがその飛行機を包み込んだ空気の塊の(地表面に対する)動きであるならば、飛行機はその塊の中を移動しながら、塊と一緒に流されているだけだともいえる(TY-6図)。つまりどれほど風が強くても、飛行機を包み込んだ空気の塊に対する速度(対気速度)は変わらないと思ってよい。言い換えれば、ジェット旅客機なら400 ノット以上の速度で大気にぶつかっているが、例えば100 ノットを超す風つまり空気がさらに機体に当たる訳ではない。その風の分は機体を包み込んでいる空気の塊の動きであって、機体と一緒になって流れて行くだけのことである。
  このことは、もっと小型の 150ノット位しか速度のでない飛行機も、100 ノットの風の中でも空気に対しては 150ノットで飛んでいて、風の分がさらに機体に力を掛けている訳ではない。ただし、強風に伴った乱気流の影響は別に考えなければいけない。
  このような飛行機でも、一旦地上に駐機しているときには数十ノットの風にも気を使わなければならない。これは風に曝されている機体の一部が地表に固定されているためである。もちろん気になる風の強さ、つまり風速は飛行機の機種によって違った値である。そこで、予測される風速によって、機種により許容される能力に応じた対策がなされなければならなくなる。飛行機の所有者は自分の持つ機材の性能を熟知しているはずであり、適切な措置を講じる責任がある。
(C)2001 KATOW-Kimio

←BACK   NEXT→