見えないのは不安
  亜音速のジェット機が巡航速度、例えばM84で飛行していれば、巡航高度一万メートルではほぼ 480ノット前後である。(注−Mはマッハと呼び音速のことで、その次の数字84が、音速の84%の速度を意味する。)これは一分間に8カイリ(約14.8キロメートル)または一秒間に約 250メートルの距離進むことである。近辺に別の飛行機が飛行していれば、接触を避けなければならない。
もちろんそれぞれの飛行機が勝手に飛行しているわけではなく、航空交通管制機関が交通整理しているので、直ちに危険になるような出会いが起こる訳ではない。とはいっても飛行領域や飛行高度によっては、この交通整理の対象に入っていない航空機が存在することもあるので、事情は複雑になる。

  交通整理されてはいるが、すぐ上や下の指定高度ですれ違う飛行機がある場合には、千フィート( 300メートル)または、高高度だと二千フィートの高度差がある。これだけの高度差があれば安全であるとされてはいるが、実際の場合にはそれぞれの高度計の誤差によってもう少し近づく可能性もある。パイロットは常に外部の監視をやってはいるが、管制機関から対向する飛行機があると通報されたときには、特に前方をはじめ周囲を監視して当該機の発見・視認に努める。相手が亜音速ジェット機だと、この間にも両者は一秒間に 250メートルずつ進むので、間隔は一秒毎に 500メートルずつ縮まっている。

  一秒間に 500メートルずつも近寄る飛行機同士を視認するためには、かなりの距離の視程が確保されなければ心許ないことになる。飛行の形態が計器を主とした航空交通管制を採用している方式だから、視程がゼロ( 0メートル)でも飛行の安全が保たれているとばかりは言っていられない。全ての航空機が航空交通管制に従う方式で運航しているわけではない。また全ての航空機がいつでもここで例に挙げたような速度で飛行している、という訳でもない。

  たとえ交通管制に従っている航空機でも、可能な限り外部監視を怠らず、周辺への目を光らせなければならないときがある。飛行場周辺においての、進入・着陸の方式には、目標となる地物の認識を必要とするものがある。その時には視程がある程度までは良くなくてはならない。(ジェット機では着地の直前でさえ、一秒間に50メートル、または百ノット以上の速度で飛行している)
(この話続く/2001.5.9
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