ところでちょっと進行速度には違いがあるが、日常的な実感としての例を挙げて見通し距離と安全性のことを考えて見ることにする。

  時速40キロメートル(市街地での一般的な制限速度)の車が一秒間に進む距離はどれだけだろうか。答は約10メートル余り(11一メートル強)になる。

  運転していて、対向車が瞬く間に近づいてくるように感じられるのは、一秒間に20メートル余りも近寄っているのだとは考えていないからだろう。そこで、見通し(視程)の悪い、例えば40〜50メートルしかないようなときに普通の速度で走っていれば、相手を見つけてから2〜3秒で間隔がなくなっている。

  また人の歩く速さは不動産の広告で駅などの交通機関からの所要時間を示すのに使われている基準では、一分間に80メートルとされている。これを標準と考えれば、一秒間に 1メートルと少しの距離を進む速さに相当する。つまり、標準的な人の速さと車の速さの比率は 1対10の関係である。

  車の通る道路を歩行者が横断することを考える。歩いて道を渡り切るまでに車が近づかないだけの距離は、この割合から判る。そこでその距離だけの見通しが利かないと、走って来る車を見つけることができないことになる。そし、 道路幅が広いほど見通し距離が良くなくては、安全な横断が難しくなる。

  いずれの場合にも、視認の必要な行動をするときには、そこでの視界あるいは視程に最低限必要な値がある、ということである。
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