霧   〜その2〜
  ここで登場した「視程」なる言葉の意味はなんであろう。簡単に言えば、少し条件を付けた見通しの距離、または見晴らしの広さのことである。そして測り方の決まりの違いにより二通りの決め方がある。

  測定地点周囲360度の内、物が見える距離の中で最短距離を採用する「最短視程」。 測定地点周囲360度の内、180度以上の範囲(切れ切れでも良い)で、この距離以上が見えると言える値を採用する「卓越視程」。

  日本は、航空の運航方法の指南役であるアメリカと同じく「卓越視程」を使っている。世界中のそれぞれの国がどちらを使っているかは、世界気象機関(WMO)が発行しているマニュアルに記載されている。視程の基本単位はメートルであるが、100メートル未満の数値は切り捨てられている。ということは、視程0メートルにも完全な0メートルから99メートルまでの幅がある。

  パイロットが離陸・着陸の是非を決める基準の一つとして、この視程値が使われる。滑走路一つ一つについて、その着陸支援装置・灯火の種類と明るさなどにより、その滑走路の使用制限値が決められている。観測によりその制限値に達しないような視程値の場合には、飛行機の運航を見合わせなくてはならない。このために出発地の受付カウンターに、冒頭に書いたような注意書きが出 ることになる。

  ここでは観測者の目による観測値としての視程を取り上げた。だが次第に飛行場が広くなり、滑走路も観測所とは離れてしまった。それらの滑走路における気象状況は、一地点で行う観測値とは掛け離れたものになることはしばしばである。この他にも理由があって、目視による視程値とは別の基準が出来た。
これについてはもう少し話を進めてから紹介することにしよう。
(C)2001 KATOW-Kimio

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