鉛直流の影響 〜その1〜
  この章の始めの方で、航空機の進行方向とその横方向の両方に直交する方向を上下方向と決めた。その上下方向の風成分を上昇流あるいは下降流とした。この約束からすると、気象でいう鉛直流とは少しずれるときがある。巡航中の水平飛行をしているときには両者はほぼ一致するが、これからの話の中で使う鉛直流の言葉は、航空機の進行方向を基準にした上下方向の成分のことも指すことにする。
  鉛直流とは風の上下方向の成分であり、航空機を包む空気全体の上下方向への移動分である。この鉛直流の変動、つまり鉛直流のシアがあったときにも、航空機に働く力は揚力の増減として現れる。揚力の式に関連して説明するとすればどのようになるだろうか。この話に入る前に予備知識を整理しておこう。
  鉛直流に変動が起こったときを「鉛直流シア」と呼ぶことにする。そのうち上昇流成分の増加に相当するものを仮に「上昇流シア」と名付けておく。これには「向かい風シア」で分けたように、四つの場合が考えられる。
  1. 鉛直流がない状態から、上昇流に変わる。
  2. 上昇流成分が増加する。
  3. 下降流が上昇流に変わる。
  4. 下降流成分が減少する。
  また下降流成分の増加に相当するものを「下降流シア」と名付ける。これも四つの場合があり、類推で想像できると思う。
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