乱気流による被害をなくすために
 ここまでにも話してきたように、現在では乱気流の発生しそうな空域についてはかなりの精度で予測可能になった。そこで運航の現場ではその空域を極力 避けるように飛行計画を立てる。それでも飛行区間によっては、その空域を避けることのできないことがある。その場合には前の節でも触れたように、その 空域を通過する間、搭乗者をしばらくの間座席に固定しなければならない。
 そのような措置を取るにも関わらず、時として乗客や客室乗務員がケガをすることがある。それも思わぬ重傷を負うこともある。その場合の状況を調べる と、たいていは座席ベルトの着用を怠っていることが分かった。
 乗客の場合は、生理的な要求でやむなく自分の座席にいなかったり、自己判断で警告を無視したり、とベルトの着用を行わないためであることが多い。や はり「ベルト着用」サインが点灯している期間中は、それを励行することが自分のためであることを認識すべきだろう。また次に述べるような、客室乗務員 の負傷を避けるためにも、この期間中は緊急以外のサービスを要求しない心掛けも必要である。
 一方客室乗務員の場合には、乗客のベルト着用状態を点検中のことが多い。これは保安要員としての義務である。また自席に着いてベルトを締めていても、乗客の要求を充たすため離席したときに運悪く揺れて、負傷につながったこともある。しかしこの場合は必ずしも保安業務でないことが多い。いずれにしても真っ先に負傷してしまっては、その後の業務に支障が生ずることになる。
 これらは乱気流による影響、場合によっては重傷を負うこともあるという、本当の恐さを知らないことが原因だろう。その解決策として、やはり飛行機利 用者に対しての啓蒙活動が必要である。それとともに運航当事者は、社内での業務規程を見直して乗客・乗員に負傷者を出さないための工夫を計るべきだろう。
 最近の実例としては、ベルト着用のサインが点灯すると、別の業務を遂行中の客室乗務員でさえも、座席に着いてベルトを着用し「客室乗務員も座席に着きますので、各自座席ベルトの着用をお確かめ下さい」とアナウンスする航空会社もある。
2001.4.26
(C)2001 KATOW-Kimio

←BACK   「視界の悪さ」→