乱気流の疑似体験
 飛行機に乗らないで身近に乱気流の起こる環境を見るために、次のようなたとえ話はどうだろうか。自転車で凸凹道を走るときのことである。凸凹の粗さによって自転車の反応が変わり、乗り手にはいろいろと乗り心地の違いが伝わる。
 車輪の半径の何倍もの曲率半径に相当するうねり、逆に十分の一位かもっと小さな凸凹なら、自転車の走る速さがかなり早くても余り影響はないだろう。しかし半径と殆ど同じくらいの粗さの場合は、余り速く走ると上下動に弾みがついてしまい、自転車が跳ね上がったりして倒れることにもなりかねない。もっと大きくて速度も早い自動車の場合で考えても同じことが起こる。
 この様な状態を避けるには、一つには走る速さを抑えてゆっくりと走ればよいことは、大抵の経験者は考えつく。それよりも前に、なるべくその様な所を避けて通れば良いことは当然ではあるが、そんなことばかり言っていられない事情もあることだろう。始めての道でその様な不具合を知らないことも有ろうし、夜の暗い道で見え難いこともある。
 同じ様に大気中にはいろいろな規模の渦が混在していることも初めの頃言った。その様な渦の集まりの中で、それぞれの航空機に特有な大きさの渦が乱気流として作用する。このことは自転車の車輪の大きさに対する、地面の凸凹の粗さの関係と比較類推すれば判り易いことだろう。
 前にも話したが、特有な大きさとはいっても航空機の飛行速度・重量などでも決まる、とも言った。乱気流に遭遇した後で、条件の変えられるものは飛行速度くらいである。となれば採るべき道は当然速度の変更である。通常は減速だろう。実際にも運航規程などに「乱気流突入速度」が掲載されている。揺れを感じたらパイロットは取り敢えずこの速度まで減速し各自が習得してきた対応処置に移ればよい。この対応処置については、いろいろあろうがここでは触れないことにする。
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