乱気流域の予知や予想と回避方法 〜その2〜
 空気は透明であるので、大気中の乱れを直接目で見ることはできない。一方発達中の対流雲の雲頂や側面などでは、水滴や氷晶の塊の動きを介して、空気の動きを感じとることができる。その動きを子細に見ることができると、局所的に渦巻きながらも雲の背丈が高まり、そして太っていくように見える。しかし晴天乱気流と呼んでいる乱れは、水滴や氷晶のような目印がないために、空気中に存在している乱れが見えずに、いきなり航空機に作用したように感じられたものである。
 そこで大気中に含まれていて、空気の動きを追跡できる物質がないものかと多くの人が考えた。大気中に含まれる(目には直接見えない)水蒸気が感知できると、非常に都合の良い追跡者になる、と考えついた人たちがいる。しかしどの様にして水蒸気を検知するかが課題である。雨のように粒の大きい水滴はある波長の電波を反射してくれる。このためレーダーによって捉えることができた。雲のような大きさの水滴ではどうかというと、波長がさらに短い電波によって何とか捉えることもできるようである。しかし水蒸気では簡単にはいかない。
 15年程前に航空の専門雑誌に発表された報告*)がある。アメリカの気象衛星には、非常に短い波長の赤外線を検知できる感知器が積み込まれていた。水蒸気から出た赤外線の連続画像を解析することにより、空気の動きが観察でき、そこから乱れの情報を引き出すことに成功した。その情報と飛行機からの乱気流報告を突き合わせたところ、非常に良く一致したという。実験的な試みであり、実用化には時間が掛かるとのことであった。その後どのように進展したかの続報を筆者は入手していない。
*)Aviation Week & Space Technology, '86. 9.1.号所載、全日空「安全飛行」誌 1986.11 No.124 に紹介
 山岳波についての話題は別に一括して話すことにする。
(この話続く/2001.4.12
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