どんな乱気流があるか 〜その2〜
 ところで、航空機が事故に遭遇して初めて認識される気象現象は、以前から幾つもの例がある。前に挙げた対流雲の中の乱気流やこの晴天乱気流も多分事故か、またはそれに近い事件を経験して発見されたのではなかったかと思う。かなり昔のことなので、残念ながら筆者にはその発端を探し当てられなかったし、周囲にも物知りがいなかった。

 また、山脈や独立した山の風下の空域では、しばしば航空機に影響する乱れができる。川の流れの中に飛び出た杭によって、その下流で落ち葉を翻弄する渦を見た。また水面下に流れを横切って丸太などがあると、その下流に丸太に平行な波が幾つか現れることがある。それと似たような状況である。ときには山岳地帯の上空において航空機に揺れを感じる。これらはみな「山岳波(Mountain wave)」と呼ばれる現象に起因する気流の乱れによるものである。なお山岳波については改めて話をすることになるが、このように地形的な原因によってできる気流の乱れは、山岳波によるものの他にも存在する。

 大型の飛行機が通過した空域の後方を飛行する航空機が、思いもよらない気流に悩まされた。小型の航空機だと横転したり、ときには機体の姿勢を立て直すことができずに、墜落にいたることもあった。実際に日本国内の飛行場付近で着陸進入中に、そのような航空機事故が続いたことがあった。これは先に進入し、着陸した大型機により発生した「航跡渦(Wake vortex)」によるものであることが判った。

 地表近くの低高度においては、山岳波のような大きな地形による乱気流ではなく、建築物・建造物によって起こる気流の乱れがある。空港のターミナルビルや格納庫により乱された気流の影響を受けている滑走路を、飛行機は離陸・着陸のために使わなければならないこともある。特に敷地の限られた、運航に制約の多い日本国内の飛行場では起こりやすい現象である。

 また市街地上空を飛行することの多い小型飛行機やヘリコプターなどでは、凸凹の激しい大小の建築物によって生ずる気流の乱れの影響を、もろに受けることになる。森や林、散在する樹木によっても気流は乱れ、作業中の小型飛行機やヘリコプターが影響を受けて事故を起こしたこともある。
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