乗り物の揺れ 〜その3〜
 乱流を含めて、このような場の乱れを直感的に理解し易くするために、説明なしで使ってきたが、「渦 Vortex 」という概念はわかりやすい。この言葉を使うと、大気中にはあらゆる強さ・大きさの渦が存在している、と言える。ちょっと横道にそれて渦という観点からすると、低気圧や台風のようなものでも、地球規模では一つの渦で、やはり地球規模の一般流に流されて移動している、と考えられる。気象衛星から撮影された連 続画像を見ると、台風や低気圧が渦を巻きながら流れている有り様がよく判る。
 大気中に浮かんでいる物体は、あらゆる規模の空気の渦に出会う。しかし、その浮遊物の運動に直接影響する渦の規模は、浮遊物の大きさや動きによって決まる特定の範囲のものである。これは川下り船の例のように、船には影響しない渦でも、周囲の漂流物には影響しているようなものである。
 航空機もここでは浮遊物の一つと考えられるから、航空機全体を包み込んで一様に流してしまう層流のほかに、大気中に無数に存在する渦、つまり乱流に遭遇することは免れない。しかし航空機に直接影響を与える乱流は、その航空機の大きさと運動の速さによって決まってくる。搭乗した航空機の種類により、またときには同じ種類や型式であってもその時の重量や速度によってさえ、揺れの体験は違うということになる。

 いずれにしても航空機が乱流の影響を受けたとき、そのような状態を「乱気流」に遭遇したという。すなわち特定の空域で「当該航空機にとって乱気流になる」という条件を作り出す乱流が存在するときだけが問題になる。その場合の運航に注意すれば、搭乗者の心配をいくらかでも減らすことができる。
 そのためには乱気流となる乱流の性質などを解明しておかなければならない。その上で判明した性質を充たす気象状況の存在領域を探し出すことができれば、その空域における飛行が避けられ、または乱気流としての影響を受けないように飛行できることになる。
(この話続く/2001.3.23
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