乗り物の揺れ 〜その2〜
 それではなぜ改まって「乱流」でなく「乱気流」と言いかえるのか、ということをここで説明しなければならないだろう。

 そのためもう少し直感的に体験できる例を挙げる。例えば絶え間なく流れている小川を見てみよう。ただ眺めていても判り難いから落ち葉などを流してはどうだろうか。葉は一斉に同じような速度で流れて行くが、左右にゆらゆらと不規則に揺れたり、向きを変えるように回転してはいないだろうか。それもそれぞれの葉が別々に勝手な動きをしている。いろいろに大きさや形の違う葉を浮かべると、揺れの状況が違うことも見て取 れることだろう。
 また水面から突き出た石や杭などがあると、その下流には渦が流れ出していることも見ることができる。単に流れの表面だけでなく、流れて来た葉っぱなどが水面下に潜ってしまったりして、渦が表面的な現象でないことも見て取れる。流れの早さや障害物の大きさによって、それらの渦の大きさや強さが変わってくる。このことは谷川やそれに続く急流では一層はっきりと見ることができる。
 そこを船で川下りするとすれば、さらに違った状況の観察が可能である。船は川の流れのこまかな不規則部分の影響は受けないが、大きなうねりによる揺れはあるだろう。そして傍らをなにか別の物が流れていると、それらは流れに翻弄されて水面下に潜ったり、渦で回転したりと漂流物の大きさによる動き方の違いが判るだろう。もちろん鳴門の渦潮のような大きな渦に出会えば、船自体も影響を受けることは当然である。
 ここで見た、船のように大きな物と、それより小さな木の枝や葉のような物の動き方の違いの元は、流れの不規則な部分から受ける影響が異なるからである。同じような乱れから受ける影響も、浮遊物の大きさの違いによって変わってくるということである。また川のように、流れの中にもいろいろな大きさの乱れがあることは、小川と谷川または大河などの規模の違いからも判る。

 このように川の流れでは、一様な速度の流れの層流と、そこから外れた大小様々で不規則な動きの乱流を、直接観察することもできる。一方気体である大気の流れではなかなか簡単には目で見ることは難しいが、やはり同じように一様な流れ、時には一様ではないが規則性のある流れと、それからはみ出した不規則な動きがある。規則的な流れは層流と呼ばれるが、総観気象の分野では「一般流(General Stream)」とも呼んでいる。
(C)2001 KATOW-Kimio

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