雷活動に対するもう一つの立場  〜その3〜
  それでは落雷の危険性があるのはどの辺からか、が心配になる。これには積乱雲内の電荷分布や地表との間の空気の放電電圧、さらには雷雲の持つ電圧などの知識が味方してくれる。これらを総合して得られたと思われる指針の一つは、積乱雲の縁が数Km以内(多分3〜2Km)に達したら屋内や雷からの退避場所に入るのが望ましい、ということである。ただしこれは夏の雷雲のようにほぼ垂直に発達した場合である。冬の日本海などに発生して雲頂が進行方向に先行するような場合は、雲頂部分からの落雷もあるのでそれを考慮しなければならない。
  自動車内も、その車が外部空間と遮断されていれば安全と言われている。駐機場で飛行機があればその中も安全であろう。これらの車内や機内は、自動車や飛行機に落雷しても、普通なら落雷電流は表面を流れて(内部へ進入せずに)地表などへ放電するという。念のため予め車体や機体をアースしておけばさらに良いことだろう。かって自動車に落雷してその自動車が炎上した事件があったという。詳しい事情を知らないので明言は出来ないが、この場合には燃料系統に不備があったのではないかと聞いている。このことからも、アースをする場合などには燃料施設からは離して置く配慮は必要であろう。
  この野外の露出地域からの待避のタイミングは非常に微妙である。それぞれの作業単位あるいは統括部門の責任者が決定することであろうが、作業行程の進捗状況や安全性を考えると、かなり決断の必要な役目である。

  雷による災害は、航空に限らずまた交通機関だけでなく、一般社会活動の中でも多大の影響があるため、多くの研究者によって雷そのものの正体解明と、それによる災害からの対策が手がけられている。現在までに多くの対策がなされて来たが、まだ知識の普及が不足しているものか、思わぬ災害も発生する。
  この小文が幾らかでも、災害防止の役にたつ知識を伝えることができれば幸いである。雷活動からだけでなく、気象現象を原因とする航空機事故を起こして欲しくないというのが筆者の願いである。
2001.9.17
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