航空機への落雷  〜その2〜
  冬季には、シベリア高気圧からの吹き出しが強いときに、日本海の暖流の上には対流雲が発生する。この雲は夏季のものとは違って、雲頂が低いけれども紛れもない積乱雲すなわち雷雲である。この雷雲は高度による風速の違いから、雲頂が進行方向に先行して進むため、前方に傾いた雲形をしていることが多い。このため雲頂からの落雷、すなわち雲底からの電荷とは逆の符号の荷電粒子によるものが増える。
  北陸地方の金沢市に近い小松飛行場は、しばしばこの雷雲に覆われ、離陸・着陸時にはこの雲を避けた運航を行わなければならない。1959年に航空自衛隊のジェット練習機がこの雷雲からの落雷により、火災を起こして市街地へ墜落した。このことが契機となりここでは雷雲の観測と、その動向に対する警戒が厳しく行われるようになった。
  元来戦闘用の飛行機は兵器などの搭載のために、必要最低限の機体装備であると聞く。一方、旅客を輸送するための民間航空に使う飛行機は、静電気に対しても二重三重に安全対策が施されている。雷雲に近づいたときに機体に帯電する静電気も、空中に放電し易くするために取り付けている機材によって、雷雲との間に危険な放電(落雷)が起こらないようにしている。また機体に落雷しても、電流が機体表面を流れて、直接内部の機器には影響を及ぼさないようにしてある。
  このような装備をしているから雷雲に入っても安全である、ということにはならない。雷雲からの影響を避けられるように、レーダーによる雷雲画像などを使った地上からの助言と、機上のパイロットの判断によって運航が行われている。運悪く落雷に遭っても、前記のような装備によって飛行機自体には影響が出ない。ただ、落雷したという心理的な影響が搭乗者には残るのかも知れない。
(C)2001 KATOW-Kimio

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