雷活動の対流運動と航空機  〜その1〜
  対流雲の中では鉛直方向に空気が流れている。その向きは前に話したように、雲の成長過程に当てはめて考えると、ある程度は判断できる。
  発生期にあっては雲の中は殆ど上昇流である。そのため水平飛行で雲を横切るときには、突入時と脱出時における鉛直流の違いによる揺れが影響する。余り大きく発達しない偏平な積雲が連なっているような空域で、雲に出入りするような飛び方をすると、相次いで上下の揺れを経験することになり、気分の良いものではない。これが乱気流の一種であることは前にも話した。
  ここで、乱気流のページで挙げたとえ話を思い出してみるとよい。それは自転車で凸凹道を走るときに経験することである。ここでこのたとえ話を思い出して貰えるとよい。
  発達している積雲の成熟期では、雲中の鉛直流は上昇と下降の両方向のものが混じりあっていて、それぞれの速さの早い時があるのは、前のページでも話したとおりである。その様に発達した空気の流れの中では、向きが互いに逆の流れの境目で鉛直風シアも大きくなり、空気の運動も複雑に乱れている。小型の航空機はもちろんであるが、大型で高性能の航空機でさえ飛行の自由を奪われることがある。搭乗者の傷害は覚悟しなければならない上、最悪の場合は墜落事故にまで発展することがある。従ってこの段階の積雲を発見したら、突入することを極力避けるようにして飛ぶことが優先である。

  このような段階の雲を避けるために、高度を上げて雲頂を越えようとするならば、雲頂から充分の高さを取る必要がある。発達中の雲頂では、上昇流が消滅しているわけではなく、下層から持ち上げた水分を凝結させながら、空気の流れは続いていることがある。水分の凝結による雲の姿の現れ方が、空気の流れに追いついていないこともある。雲の形が作られるのが遅れていることに気付かないと、強い上昇流の柱を横切ることになるかも知れない。
  この時期の雲底からは、すでに話したように降水が始まっていることが多いが、それと同時に下降流が流れ出している。この流れは地表面に突き当たった後、水平流となって四方に広がって行く。下降流が余り強くはないが持続しているようなら、四方へ広がる水平流も連続して遠くまで到達することになる。この水平流は地表にあった周りの空気より冷たいため、先端では突風としての強い風となるが、その後涼しさとなって人々にやすらぎを与えたりする。これが雷活動のシリーズの冒頭に記述したような情景となる
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