上昇する空気塊と周辺大気の安定性
  それではどの様になったら「大気が不安定だから雷雨になる」と言えるのだろうか。もう少しの間理屈っぽい話に付き合って貰うことにしよう。
  地表面からでも、あるいはどこか適当な高度からでもよいが、空気の塊が例えば風船玉のようになって上昇し始めたとする。高度が増えれば、風船玉は膨らみながら前に言ったような気温減率でその塊の温度が下がる。そこで塊の温度と周辺大気の温度とを較べて見ることにする。
  この空気の塊の出発点での温度は、周辺の気温と同じである。この空気の塊を強制的に上昇させると、塊の湿度が100%にならない内は乾燥断熱減率で気温が下がるので、周辺の気温より低い値つまり冷たくなる。そしてこの場合には周辺の空気よりも重いので、そのままでは上昇ができないことになる。
  塊の中の水分が、前に話したような凝結または昇華を起こすと、その後は湿潤断熱減率での温度低下になるので、上昇する空気の塊の温度が周辺大気の気温より高いことが起こる。こうなると塊は周辺大気より軽いのでさらに上昇を続ける。このような状態に達すると、上昇する空気の塊からは水分が水滴(ときには氷晶や氷粒)となって放出される。放出された水滴や氷晶・氷粒が集まったものが雲である。上昇を続けている塊と周辺大気の温度が同じになれば上昇は止まる。ここが雲の天辺、すなわち雲頂である。これが対流雲の発生のからくりで、出来た雲は積雲と呼ばれている。
  塊と周辺空気が同じ温度になる高さが高ければ高いほど、言い換えれば上空の気温が低いほどこのからくりが連続して行き、対流雲はどんどん発達して、雄大積雲にまで成長する。さらに成長すると雷雲すなわち積乱雲にもなる。雷のふるまいにまつわる話はこの後のページでも度々披露することになる。
  このように対流雲が発達するときは、大気の気温減率が湿潤断熱減率よりも大きいときである。すなわち上層の気温が低いか、上層に寒気が進入して来たといわれたようなときに相当する。いわば不安定な大気状態ということで「条件付き不安定」と呼んでいる。
  これでこの話の冒頭に挙げたエピソードが判ったことになるのではなかろうか。そして大気の熱的安定性についての話は終わりとなる。後はこの理屈によって発生する気象現象がこれからの話になる。

  ここらで一息入れるためコーヒーブレークをする事にしよう。
(C)2001 KATOW-Kimio

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