熱的安定性とは  〜その3〜
  これとは逆に「熱的不安定」な状態を、簡単に実験できそうな例によって見てみよう。グラスに入れた熱いコーヒーを冷やすのに、後で上からアイスキューブを入れたとする。(「アイスコーヒーの入れ方は違うよ」だって。でもこれは実験だと思って我慢して下さい。)そのままでは冷たくなるのは氷の入った上の方だけで、底の方はまだまだ熱いはずである。このように冷たいコーヒーが上にあって、底の方のコーヒーがまだ熱いグラスの中が「不安定」な状態の例である。そのままにしておいても、グラスの中で小規模な対流が起こって次第に全体の温度が下がるが、かなり気長に待てるのでないと、飲む前にコーヒーブレイクが終わってしまうかも知れない。早く飲み終わらすためにはよくかき回して、強制的に対流を起こしてやらないと全体が冷たくならない。ただ風呂桶の例では、そのままでも一応安定な状態である。
  しかしコーヒーや風呂の場合には、かき回すことによって強制的に熱のやりとりを起こさせ、混じり合わせて均等な温度の安定した状態に出来る。こうしてグラスや風呂桶の中という狭い世界では簡単に、より安定な状況に納めてしまうことは出来る。

  それでは地球表面の大気中という広い空間では、「不安定」な状態とはどんな時であり、その解消にはどのような現象が伴うのだろう。そんなに簡単な変化では済まないだろうことは想像できる。それについての話をこれからして行くことにする。
(この話続く/2001.7.12
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