熱的安定性とは  〜その2〜
  ところで二番目の例では水と油の重さ、正確には「比重」に違いがあるということを理解して貰う例え話でもある。この場合には、例えに使った二つの物質に違いがあり比重が違うので、比重の小さい油が比重の大きい水の上に乗る形で、二つが別々になって重なり合った。
  そもそも、比重とは一定の体積の物質の「重さ」、これも物理学では「質量」のことと決められている。ここでもまた水を使うが、今度は器に入れた水を暖めることにする。暖まるに従って分量(体積)が増えて行くので、もし初めに器にいっぱい入れてあったら溢れてこぼれてしまう。ということは、その分だけ軽くなることでもあり、言い換えれば比重が小さくなることである。

  これで一つの物質でも温度によって比重が違うことは解ったと思う。それでは温度の違う水を一つの器に入れたらどうなるだろうか。この場合には実行するのは簡単だが、その後どうなったかを知るのは難しい。しかし次のような経験をした人はいくらでもあるだろう。風呂桶の中の水を下からガスや薪で沸かす風呂のことである。火を付けてからかなり時間も経ったのでもうそろそろ沸いた時分だろうと思い、上の方はちょうどよい湯加減なので、かき回して湯加減を確かめる手間を惜しんで飛び込んだところ、下の方はまだ水で冷たくて震え上がってしまった。
  この場合には温度の暖かい水の比重が小さいので、比重の大きい冷たい水の上に浮いている状態であった訳である。この状態は熱的な条件としては安定な 状態といえる。このままにしておいても、上と下で温度の違うそれぞれの水の層も、水という同じ物質のためにある程度混じり合うが、均一な温度になるまでにはかなりの時間がかかるだろう。
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