悪視程の中での着陸  〜その2〜
  電子技術の発達により、航空においても航空機の運航を支援するために、電子式の航法援助装置が各種開発された。また航空機にも電子技術は取り入れられ、パイロットが飛行計画を入力することによって、コンピュータがエンジンの運転・燃料の流れ・各補助翼類の作動の指令を出してくれるようになった。
この結果、操縦席の前は指令の経過や成果を示すためのモニター画像で占められ、さながらテレビゲームの画面を見ているような感じになった。

  それはさておき、航空機側の各機器も地上側の援助施設もその作動に信頼性が増し、精度も良くなってきた。このため従来パイロットに課せられていた、地上の目標を目視するために必要な制限距離が次第に短くなった。

  航空機(自動操縦装置)と飛行場施設(計器着陸装置)の組み合わせによっては、視程が 0(ゼロ)メートルでも着陸可能になった。しかもパイロットは最初に条件を設定するだけで、その後は操縦のための一切の機器に手を触れる必要がない。否むしろ手をつけない方がよい場合さえあるという。

  ただし現状では、ゼロ視程着陸後には駐機場への誘導路を走行するために、パイロットが目で走路を認識しながら進行している。技術革新の速さが目覚ましい現代ではあるが、まだしばらくの間は人(ここでは人の眼)の介在が必要のようである。(最近、赤外線利用の映像によって地上走行を可能にする機器が開発されたというニュースがあった。)

  こうなると悪視程そのものは、航空機の運航を阻害する現象ではなくなる。
ただこれで安心してはいけないのが、ちょっと前に触れた「ヒューマン・ファクター」に関わる問題である。そしてこの後で述べる別の種類の気象現象が現れたときである。それらが複合したときには悪視程はまだまだ「航空機運航を阻害する気象現象」からの免責を得る訳には行かない。
2001.6.8
(C)2001 KATOW-Kimio

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