鉛直流の影響 〜その3〜
  航空機が運航する通常の大気中では、一般に鉛直流は対気速度に比べて微小で(秒速数センチメートル)、仰角の変化は殆どなく、と言うよりもないのと等しいので、揚力の変化は現れないと思ってよい* 。しかし鉛直流の速度が数ノットから数十ノットにもなると、特に航空機が低速のときは明らかに仰角の変化が現れ、揚力の変化として現れてくる。別のページで述べているが、発達中の積雲や積乱雲の中では数十ノットの鉛直流が存在することは珍しくない。(* 100 ノットが秒速約50m である。仮に対気速度の100 ノットに対して秒速 1cmの鉛直流では、その勾配は1/5000となり角度では約 0.7分となる。また鉛直流が秒速 1m( 2ノット) となって、やっと勾配は 1/50 すなわち角度は 1度余りになる。)
  航空機を操縦する立場からは、上昇流により仰え角が増え飛行面から上方に変位した機体は元の飛行面に戻さねばならない。通常は機首を下げたり、エンジン出力を加減して所定の飛行面に戻すように調整する。(WS-20図)
  また、下降流により飛行面から下方にそれたら、機首を上げて(仰え角が増え、揚力係数も増えるように)揚力を取得して、所定の飛行面に戻ることになる。この場合には失速角を超す機首上げにならないような注意が必要である。
  先に挙げた「上昇流シア」の4つの場合の内、第一の場合は上に述べた。(WS-20図)

  後の3つの場合にはそれぞれ次のようになる。すなわち、
ケース2.上昇流の増加により、相対的気流線がより上向きになるため、それまでより大きくなった迎え角を減らす様に機首を下げる。
ケース3.下降流のため、相対的気流線が下向きであったことに対応して、機首を上げて迎え角を作り揚力を得ていた。上昇流に変わり相対的気流線が上向きになるので、増えた迎え角を減らすために機首を下げる。
ケース4.上と同じく、機首を上げて迎え角を作り揚力を得ていた。下降流が減少したため、相対的気流線が水平に近づき、迎え角が大きくなる。それに対応して機首を下げ迎え角を減らす。

  いずれの場合もシアに遭遇する前より機首を下げて、相対的気流線に適応した迎え角になるような調整をすることになる。この他にエンジン出力の調整等も加わるのかも知れないが、それはここでは触れないことにする。(WS-21図)
(C)2001,2002,2003 KATOW-Kimio

←BACK   NEXT→